感想『秘封大学生・2』(四ツ星レストランおかん
 
 
 「蓮台野には冥界の入り口やその奧の世界もあるの!私たちは見たわ、それは――」
 同年代の女学生がお相手ということで胸を躍らせながら向かった合同コンパ、お酒もそこそこ入って盛り上がりつつある中、やや熱っぽく、そして真剣な表情でそんなことを語る女学生を目の当たりにしたら、どんなことを思ってしまうのだろう。それはまあ、痛々しいと思わずにはいられないだろう。なぜならば、現実の世界の人間にとって、現実の世界と幻想の世界は平行して存在し得ないからである。
 
 私が秘封倶楽部のことを想うにあたってつい忘れてしまいがちな事実を、本書は目の前に強く突きつけてくれたという感覚がある。タイトルにある通り、彼女たちは大学生である。幻想郷の住人ではなく、どちらかといえば、世界観的には「こちら側」の少女たちなのだ。世界では科学が信仰され、幻想の世界が入り込む余地は無い。そんな紛れもない「現実の世界」に「幻想の世界」の一部を持って生まれた彼女たちは、少なくとも蓮子は、そのギャップに苦しんでいたのではないか。世界と違う自分の目を、世界と違う自分を。
 そして、同時に本書に於いて強く感じられたのは、「メリーの存在」である。自分自身の思いに突き動かされながら精力的に活動していた蓮子が、ふと疑問を持ってその場から動けなくなって仕舞ったときに、それを払拭して手を引いてくれる存在がメリーだった。互いに持っている「幻想の世界」を認識し、肯定し、共有することで秘封倶楽部が成り立っている。蓮子の目が持つ能力も、メリーが持つ能力も、それは確かに凄いものであるが、幻想の世界が信じられていない世の中で、あれだけひたむきにサークル活動を続けられるのは、互いの存在が大きいのだろうと、強く強く思うお話であった。
 
 ……と、同時に、蓮子ちゃんと合コンしたいと、強く強く思うお話であった。
 
2013.01.06 途稀

 

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