感想『てぇゐ13』(さけほぐし
 
 
 今回も可愛かったです。もっと沢山読ませて下さい。――読んだその日のうちに、もっとガッツリ伝えておけばよかったなあと、今になってまた思う一冊である。
 
 サークル「さけほぐし」の刊行するてぇゐシリーズも、本作でナンバリングを13とした。時たま総集編や0.5刻みのCMYK巻が挟められている為、実際の刊行数は、そのナンバーよりも多いことになる。本作中に登場する幻想少女達の日常は、まさに「桃源郷としての幻想郷」の性質が強く表に出ており、つらさや悲しさ、苦しさが基本的には無い。あっても笑い飛ばせてしまうものである。そして、言っていることややっていることは、非常に「こっちの世界」に近い。世界観として我々に馴染みやすく、また登場する少女達のキャラクターがそれぞれよく際立っているため、飽きることなく読み進めることができる。そして立ち読み厳禁。思わずフフッと噴き出してしまうからだ。自室でのんびり笑いながら読みたい本である。
 
 可愛い、ということについては先述にもあったことだが、では何が可愛いのか、そして誰が可愛いのか、という話になる。本書に置ける可愛い筆頭は射命丸文、通称文ちゃんである。この子については本当に愛くるしい。
 それでは何故、文ちゃんが可愛いのか。本書作者の描き出す文ちゃんは「子供の可愛らしさ」と「大人の落ち着き」の両面をバランス良く持ち得てるからではないか、と考える。子供という存在は確かに可愛らしいものだが、それ故に持ち得てしまう嫌らしさというのも事実として存在する。例えば、五月蠅かったり、我が儘だったり……。その部分が、見事に大人の落ち着きに置き換わり、「なんだこの可愛い子は!?」という具合に完全無欠の可愛らしさとして輝き出すのだ。
 
 笑い、和む。読めば読む程に気持ちが温かくなる一冊である。
 
 

2013.1.20 途稀

 

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